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2023.11.15
「Metro Ad Creative Award 2020」学生部門賞の受賞を糧に、ずっと憧れていた広告業界へ。
偶然の産物から練り上げた巧みなアイディアで受賞。
「Metro Ad Creative Award」は東京メトロの広告媒体を題材とした広告賞だ。年齢、国籍、職業問わず、誰でも応募可能なアワードとして2017年にスタートし、応募総数は開始当初より大幅に増えている。2023年度はグラフィック部門、プランニング部門、デジタルサイネージ部門の3部門で10月16日より作品募集を開始した。
今回は「Metro Ad Creative Award 2020」の「プランニング部門」で学生部門賞を受賞した気田李愛さんにインタビュー。東北芸術工科大学在学中に当アワードに応募したきっかけや、制作時のエピソード、受賞の経験が今にどう生かされているのか、また今後のビジョンなどについて伺った。
―まずは気田さんが「Metro Ad Creative Award 2020」に応募したきっかけを教えていただけますか?
「私は大学でアイディアを発想してプランニングする特殊な学科を専攻していました。アイディア出しや分析をしていく中で、コミュニケーション構造を作るのがすごく楽しいなと思い、その一環で100件以上のコンペに応募していたんですが、『Metro Ad Creative Award 2020』もその一つでした」
当時の協賛企業の中から気田さんが応募したのは、株式会社チュチュアンナの課題「靴下3足1,000円モデルの認知度向上」だった。そして掲出場所である駅中のデジタルサイネージに合わせて気田さんが提案したのが“エキナカ すいそくかん”だ。
遊びの集合場所となる駅で、おすすめのスポットを教えてくれるモノと、3足1,000円靴下の“おそろい”コミュニケーションを掛け合わせ、「おそろ靴下で○○行こう!」と提案。デジタルサイネージを水族館に見立て、3足の靴下を組み合わせてデザインした“魚”を泳がせるというアイディアだった。
―“エキナカ すいそくかん”のアイディアはどんなふうに発想されたのでしょうか?
「いつもアイディアが浮かんだらメモのように書き出していて、当時もまずは課題となる市場やターゲットの環境を分析して、アイディアをどんどん書き出していました。ところが、けっこう行き詰まってしまったんです。アイディア出しというより、落書きのような感じで靴下の絵を描いていたら、たまたまそのイラストを組み合わせたものがなんとなく魚っぽいシルエットに見えて。そこから“エキナカ すいそくかん”というアイディアを思いつきました」
―制作中、気田さんにとって一番の難題は何でしたか?
「私は出身が北海道の帯広で、大学のために山形に出たんですが、地元やそれまで暮らしてきた環境の中で、サイネージを見たことがなかったんです。だから最初はネットで“サイネージ、どんなもの?”とか調べていたんですけど、なかなかイメージがわかず…。そんな時、ちょうど東京に旅行に行く機会があり、新宿駅などでやっと実物のサイネージを見ることができて、写真を撮ったりすることもできました。それに実際にサイネージの周りを歩いてみると、遠くから見るのと近くから見るのとではイメージが違うんだなという気づきもあって。自分の足で確かめるのはやっぱり大事だなと改めて思いました」
実物のサイネージを見たことで壁をクリアし、目を引く広告を発想した気田さん。さらに “エキナカ すいそくかん”の中で気に入った魚をスマホで読み込むと、3足分の靴下の着用イメージや商品情報が現れ、オンラインで購入できるというECにつながる展開まで構想した。
コロナ禍の就職活動で活きたメトロアワードの受賞経験。
気田さんは小さい頃からとにかく構想することが好きだったという。根本にある「他の人のアイディアと被りたくない」との思いが、斬新なアイディアを生み出す源になっているのだろう。これまで数々のコンペに応募し、大学のゼミ仲間と一緒に受賞した経験も糧になっているという。
―そうした受賞の経験は就職活動や現在にどう活かされていますか?
「就職活動時がちょうどコロナ禍で、面接もリモートで行われていたので、距離があるというか、なかなかペースを掴むのが大変だったんです。そんな中、面接の最初に自分からパソコンの画面共有で“こういう企画を作ったので紹介させてください”と、“エキナカ すいそくかん”の企画書をアピールできたことは大きかったです。この企画の説明自体は何回もやっていて慣れていましたし、そこで自分のペースを掴んでテンションを上げてから、通常通りの受け答えができたので。しかも『Metro Ad Creative Award』は広告業界でよく知られているので「あ〜、あの賞ね!」という感じで、受賞したこと自体が自己PRになりました」
現在、気田さんは株式会社ADKクリエイティブ・ワンに在籍。自身がずっと憧れとして思い描いていた広告業界で活躍している。
―現在はどんな業務に携わっているのでしょうか?
「デジタル・プランニング局という部署に配属され、業務の半分くらいはプランニングに関わらせていただいていて、もう半分はSNSの運用という、デジタル系のプロデューサー的なところを担っている状況です。課題からアイディア出しまで一貫して手がけるところは、ほぼ大学で勉強してきたことと同じで、当時やってきたことを生かしながら楽しく仕事をさせていただいています。あとは常に企画書を作る業界なので、先輩の企画書を見て勉強になる部分もありますし、もうちょっとこういう要素を入れた方が丁寧かもしれないなとか、今まで企画書を作ってきたからこそ気づくこともあります」
―これからアワードへの応募を考えている人に向けて、受賞者の先輩として、ぜひアドバイスをお願いします。
「自分が購入者の視点になってみて、自分だったら本当にその企画をやりたいと思って行動するかどうかを、よく考えてみることが大事だと思います。ただ面白いアイディアを出しましたというだけではなく、こういう設計で作る予定で、視覚の導線であったりとか、その後の展開であったりとか、企画書に詰め込める要素の詳細はどんどん詰めていった方がいいのかなと思います」
アワードを受賞し、プランニングの仕事を続ける根拠に。
―広告賞に関わらず、自身の今後のビジョンについてはどう考えていますか?
「日本全国のいろんな人が知っているような幅広い企画を作っていきたいです。何かを考える、構想する職についている今がすごく楽しいので、そうした能力をもっともっと向上できるようにスキルを身につけて、自分の作った企画を見た人に “この企画、なんか見たことある”とか“私はこれを見て買ったよ”といってもらえるような、実際に人を動かせるようなコミュニケーション設計を考えられるプランナーになっていきたいと思っています。私は動物が大好きなので動物に関わる企画や、Vtuberなどの新しい文化を取り入れた企画をプランニングしてみたいです」
学生時代に学んだことや受賞経験を存分に生かし、憧れの業界で未来を切り拓き始めた気田さん。
―これからも広告賞への応募は続けられますか?
「プランニングの業務にずっと携わっていたいので、実際に今も応募は続けています。自分にプランニングの力があるという根拠としていろいろなアワードを受賞したいですし、『Metro Ad Creative Award』にもまたチャレンジしたいです。それから『カンヌライオンズ』という世界的に有名な広告賞があるんですが、将来的にそのゴールドを取りたいなという野望があります。そこに向かって努力を続けていきたいです」
第7回目となる「Metro Ad Creative Award 2023」ではカシオ計算機、明治、サッポロビール、ニュー・オータニなどの企業がデザインやアイディアを募集中だ。当アワードの受賞を経て、憧れの広告業界に就職した気田さんのように、ぜひ挑戦して夢の扉に近づいてほしい。