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2019.12.13

審査員が語る+1 POINT
渡辺 潤平 氏「何を言うか?=企画」

渡辺 潤平

広告は、目にした人を強引に振り向かせる力がやっぱり大事だと思っていて、そういう意味では「何を言うか?=企画」をじっくり煮詰める作業ができているものが審査員の目に留まるような気がします。

-交通・OOH広告でどうしたら人を振り向かせることのできるのか?-
圧倒的にコピーですね、僕の場合。電車に乗っても街を歩いても、目に飛び込んでくるのは、ほぼコピー。完全に職業病なのですが、街なかで発信される言葉が、どのような想いを背景に生み出され、どのような過程で磨かれながらコピーとして結実したのか。そこを自分なりに読み解くのが好きなんです。

僕自身、書き手としてこだわっているコピーは、時代の空気をガラッと変える起爆剤のような言葉。最近目にした中でとくに印象的だったのは、ラグビーワールドカップのコピー「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」です。

初めて目にした時は、ちょっと大げさじゃ…と感じてしまったのですが、日本チームの快進撃や、大会そのものの素晴らしさも重なって、人々がじわじわとラグビーに引き込まれ、歴史的な成功を収めた大会として多くの人の心を鷲掴みにした。その原点となったのがまさに、このコピーだと思うんです。結果、多くの人にとって「一生に一度」の特別な経験になった。つまり、世の中がこのコピーを追いかける状況が生まれた、ということですよね。

「言霊」なんてよく言いますが、広告で発信される言葉には、その商品の「生き様」を示すという大事な役割があると思うんです。その視点でいくと、難解だったり変に陰のある言葉よりも、できるだけ明確で前向きな言葉を僕は書きたい。広告を目にする側としても、やはり明るい空気をまとったコピーに強く惹かれます。

電車に乗ると、8割の人はスマホを眺めていますよね(もっとかな)。人々の興味を秒でつかんで、目と脳味噌を強制的に振り向かせる。そのパワーを持っていないと、とくに交通広告は単なる風景に甘んじてしまう。

人を振り向かせるためには、言葉の磁力で興味を掻き立てることが極めて重要だと考えます。広告キャンペーンは加速度的に複合化し、コピーはそれぞれのピースを繋ぎ止めるための役割を担わされる局面が増えた気がします。けれど、僕はやっぱり1枚のポスター、1本のコピーで、どれだけ人の心を動かせるか?という勝負からは逃げたくないと思っています。